HOME > タイ語の音声学(1)
Sawasdee Thailand
タイ語の音声学(その1)
   →   1   2   3   4 

(はじめに)

このページは、私がバンコク市内で2年間タイ語を勉強した後に学校に提出した修了論文「現代タイ語の音声学」に記した内容を元にしています。

文献とした書籍の見解によるところが大きいと思いますが、もしも私の誤解釈等がありましたらお知らせいただければ 嬉しく思います。

目次  

  1. 歴史と特徴
    1. タイ語の歴史
    2. タイ語の特徴
  2. 発音
    1. 母音
    2. 半母音
    3. 母音文字の語形変化
    4. 母音文字の消滅
    5. 母音として使う子音
    6. 子音
    7. 開音節と閉音節
    8. 音節頭子音と音節後子音
    9. 音節後子音として現れる子音文字
    10. 複合子音
  3. 声調
    1. 声調記号と声調

   歴史と特徴

→ タイ語の歴史
現代のタイ語に対し、タイ文字を考案したスコータイ王朝のラームカムヘング大王の時代のタイ語とを比較してみると その時代のタイ語には以下に示すような特徴があります。
  1. ほとんどの母音文字は、子音文字の左側に記述した。唯一の例外は母音อาである。
  2. 短母音อะ に続く末子音である場合、短母音 อะを記述せずに、末子音文字を2文字続けて記述した。
    • ขับขบบと表現
    • จับจบบと表現
  3. 声調記号がマイエークอ่とマイトーอ้ の2種類だけであった。
  4. 短母音、長母音の区別がなかった
その後、スコータイ王朝のマハータンマラーチャーリタイ王の時代になると以下のように変遷しました。
  1. 母音อิ อี อึに関しては 子音文字の上に母音文字を書くようになった。
  2. 母音อุ อูに関しては 子音文字の下に母音を書くようになった。
  3. 母音เอ แอに関しては 引き続き子音文字の前に母音文字を書いた。
  4. 母音ไอ ใอ โอに関しては 引き続き子音文字の後ろに母音文字を書いた。
  5. 子音文字を新たに追加した。
さらにロップブリー王朝のプラナーラーイマハーラート王の時代になると以下のように変遷しました。
  1. 短母音อะ に続く末子音である場合、 子音文字を2度続けて書く代わりに、マイハン記号をつけて記述するようになった。
    • สบบสับと表現
    • รกกรักと表現
  2. 子音文字 ศ ษ ส が新たに増えた。
  3. 声調記号が以下に示す4つになった。
    • マイエーク อ่
    • マイトー อ้
    • マイトリー อ๊
    • マイチャッタワー อ๋

→ タイ語の特徴

純粋なタイ語の単語の特徴を列記すると以下のようになります。
  1. 単語のほとんどは単音節の単語である。
    • กิน ดิน นั่ง นอน พ่อ แม่ ปู่ ย่า ตา ยาย

  2. 末子音文字に関して、それが有音末子音、無音末子音に関わらず子音本来の読み通りに綴る。
    • 末子音[n]に関して、จน คน ขน
    • 末子音[t]に関して、สด จด คด
    • 末子音[k]に関して、นก ตก ยก

  3. 同じ発音であるが声調だけが異なる単語が存在し、声調の違いによって単語の意味が異なる。
    • ปา の意味は「森」
    • ป่า の意味は「森」
    • ป้า の意味は「おばさん」

  4. 物を数えるための類別詞がある。
    • ช้าง 2 เชือก
    • บ้าน 3 หลัง
    • พัดลม 4 เครื่อง

  5. 綴る際にカーランอ์をつける文字が存在しない。 カーランをつけて綴る単語はバーリー語、サンサクリット語、または他の外来語である。
    • สัตว์ จันทร์ กอล์ฟ
   発音

→ 母音 สระ

タイ語の母音には24種類(学説によっては21種類)の音があり、以下の2種類に分類することができます。
  1. 単一母音(18音)
  2. 複合母音(6音)(ただし学説によっては3音とする考えもある)
単一母音とは、1つだけの音から構成される母音のことであり、口の中のどのあたりで発音するか、さらには発音するときの 舌先の位置別にまとめてみると以下の表のようになります。

(表1)口の先の方で発音する単一母音
発音時の舌の位置 短母音 長母音
อิ อี
เอะ เอ
แอะ แอ

(表2)口の中の方で発音する単一母音
発音時の舌の位置 短母音 長母音
อึ อื
เออะ เออ
อะ อา

(表3)口の奥の方で発音する単一母音
発音時の舌の位置 短母音 長母音
อุ อู
โอะ โอ
เอาะ ออ

複合母音とは2つの音から構成される母音のことであり、口内で舌の位置を上から下の素早く動かして発音します。

複合母音には以下の6つがあります。

(表4)複合母音
複合母音 母音の構成
(1) เอียะ อิ + อะ
(2) เอีย อี + อา
(3) เอือะ อึ + อะ
(4) เอือ อื + อา
(5) อัวะ อุ + อะ
(6) อัว อู + อา

現代のタイ語では、上記の複合母音のうち(1)と(2)、(3)と(4)、(5)と(6)の各々についての違いがなくなっています。なぜなら、 (1)(3)(5)のように短母音として発音しても、(2)(4)(6)のように長母音として発音しても、それぞれ単語の意味が変わらないからです。

その理由により、複合母音の数は6つではなく3つであるとも言うことができ、母音の数を21種類として数える学者がいるわけです。

→ 半母音 สระเกิน

母音のすぐ後ろに母音としての発音をする子音文字がつく音を半母音と言います。半母音には以下に示す8種類があります。

(表5)半母音
半母音 母音の構成
(1) อํา อะ +
(2) ใอ อะ +
(3) ไอ อะ +
(4) เอา อะ +
(5) รึ
(6) ฤา รื
(7) ลึ
(8) ฦา ลื


→ 母音文字の語形変化

単語を綴る際に、母音のうちいくつかの母音は末子音に続くときに母音の綴り方に変化が見られます。
  • 母音อะが末子音に続くときはマイハン記号をつける。
  • 母音เอะ แอะが末子音に続くときは マイタイクー記号をつける。
  • 母音เอาะが 子音文字につくときは、声調がマイトーに変わる。

上記3つのことを表にまとめると以下のようになります。

(表6)母音文字の語形変化
綴り 元になる音
(1) ฉัน ฉะ +
(2) ขัน ขะ +
(3) เป็น เปะ +
(4) แข็ง แขะ +
(5) ก็  + เอาะ


→ 母音文字の消滅

単語を綴る際に、母音のうちいくつかの母音は末子音に続くときに母音字を綴りません。また単語によっては例外的に母音字を綴りません。
  • 母音โอะが末子音に続くときは母音字を綴らない。
  • 母音ออ を含む語のうちでいくつかの語は母音字を綴らない。
  • 母音อะがいくつかの子音字に導かれるときは 母音字を綴らない。

上記3つのことを表にまとめると以下のようになります。

(表7)母音文字の消滅
綴り 元になる音
(1) กด โกะ +
(2) นก โนะ +
(3)  + ออ
(4) ขนาน ขะ + นาน
(5) ตลาด ตะ + ลาด


→ 母音として使う子音

母音として使う子音にはอ ย วの3つがあります。


→ 子音 พยัญชนะ

現代タイ語の子音には44種類の子音文字があり、21種類の子音に分類できます。子音の音別に分類すると以下の表のようになります。

(表8)子音文字の音別分類
分類 子音文字 分類 子音文字
1 11
2 ข ฃ ค ฅ ฆ 12 ณ น
3 13
4 14 ฝ ฟ
5 ฉ ช ฌ 15
6 ญ ย 16
7 ฎ ด 17 ผ พ ภ
8 ฏ ต 18 ล ฬ
9 ฐ ถ ฑ ฒ ท ธ 19 ซ ศ ษ ส
10 20 ฮ ห
    21

これらのうち、末子音として使わない子音文字は ฃ ฅ ฉ ฌ ผ ฝ ห อ ฮ の9種類です。言い換えると、これら9種類の子音文字で終わる単語はありません。

また、これらの子音文字を声調を決定するひとつの要因である中音字、高音字、低音字に分類すると以下の表のようになります。

(表9)子音文字の中音字、高音字、低音字による分類
中音字 อักษรกลาง ก จ ด ฎ ฏ ต บ ป อ
高音字 อักษรสูง ฉ ข ฃ ฐ ส ผ ฝ ห ศ ษ ถ
低音字 อักษรสูง ค ฅ ฆ ช ฌ ซ ฑ ฒ ท ธ พ ภ ฟ ฮ

さらに高音字と低音字のうちのいくつかの子音は、声調を除いてまったく同じ発音をするものがあります。 これを対になる文字 อักษรคู่ といいます。

下の表は対になる文字を示し、各行内の子音文字は声調を除いてすべて同じ発音になります。

(表10)対になる文字
  高音字 低音字
(1) ค ฅ ฆ
(2) ช ฌ
(3) ศ ษ ส
(4) ฐ ถ ฑ ฒ ท ธ
(5) พ ภ
(6)
(7)


→ 開音節と閉音節 พยางค์เปิดและพยางค์ปิด

音節には開音節と閉音節の2種類があります。

開音節とは「子音+母音」として構成される音節、閉音節とは「子音+母音+子音」として構成される音節を意味します。

พ่อ แม่ ตา ปู่ は開音節、นก เงิน งาม は閉音節です。

→ 音節頭子音と音節後子音 พยัญชนะต้นและพยัญชนะท้าย

音節頭子音とは各音節の最初に現れる子音を意味し、すべての音節は音節頭子音に導かれます。音節頭子音を含まない単語はありません。

また、音節後子音とは音節の最後に現れる子音を意味し、必ずしもすべての音節に現れるとは限りません。

ควาย  ช้  ถ  ปลา  าร  のうち、赤字で示した子音が音節頭子音です。
ข้าว  ปลูก  มาก  のうち、緑字で示した子音が音節後頭子音です。

→ 音節後子音として現れる子音文字

音節後子音として現れる子音文字は以下に示す8種類があり、子音文字毎に音節後子音としての読み方が決まっています。

(表11)音節後子音としての子音文字
  子音文字 発音
(1)
(2)
(3)
(4)
(5) น ณ ญ ร ล ฬ
(6) ก ข ค ฆ
(7) จ ช ซ ฎ ฏ ด ต ฐ ฑ ฒ ถ ท ธ ศ ษ ส
(8) บ ป พ ภ ฟ

→ 複合子音 พยัญชนะประสม

複合子音とは、連続する2つの子音文字から構成させる子音を意味し、いくつかの単語の音節頭子音の中に現れます。 複合子音は以下のように分類されます。
  1. 完全複合子音อักษรควบ
    1. 真の完全複合子音 อักษรควบแท้
    2. 見かけの完全複合子音 อักษรควบไม่แท้
  2. 導子音 อักษรนํา
真の完全複合子音 とは、連続している第一子音字と第二子音字を同時に発音する子音のことを意味します。第二子音文字となりうるのは ร ล วの3文字だけです。 真の完全複合子音を含む単語の例としては ควาย ความ เกรง กราบ กลัว ปลาがあります。

見かけの完全複合子音 とは、綴る際には2つの子音字を連続して綴りますがそれを読むときは第二子音を発音せずに第一子音だけを 発音する子音のことを意味します。 見かけの完全複合子音を含む単語の例としては จริง สร้าง เสริมがあります。

また音節頭に現れる
ทรの連続した子音文字2つは常に の発音として読みますので、この場合も見かけの完全複合子音であるということができます。

導子音 とは、ひとつの音節内で連続している第一子音字と第二子音字であり、かつ第一子音字に続く音として母音 อะをあてはめて発音する子音を指します。本来は1つの音節なのですが あたかも2つの音節であるかのように発音します。

導子音を含む単語の例として
โขนง ตลาด などが あります。

(例外)

導子音の読み方の例外として以下の2つのことがあげられます。
  1. 子音字に導かれる子音字 を含む語は現代のタイ語ではอย่า อยู่ อย่าง อยาก の4語だけであり、この場合は第一子音字に対しては母音 อะを付与しない。
  2. 子音字に導かれる子音字 ง ญ ณ น ร ย ว ม ล ฬ を含む語は子音字に対しては母音 อะを付与しない変わりに子音字 の声調に変わる。
   声調

→ 声調記号と声調 รูปวรรณยุกต์และวรรณยุกต์

タイ語の声調には以下の5種類の声調があります。
  1. 平音 เสียงสามัญ
  2. 低音 เสียงเอก
  3. 上昇下降音 เสียงโท
  4. 高音 เสียงตรี
  5. 下降上昇音 เสียงจัตวา
また声調を示す声調記号には以下の4種類があります。
  1. マイエーク อ่ ไมัเอก
  2. マイトー อ้ ไมัโท
  3. マイトリー อ๊ ไมัตรี
  4. マイチャッタワー อ๋ ไมัจัตวา
これらの5つの声調を、先に述べた中音字・高音字・低音字別と声調記号別に表にすると以下のようになります。

(表12)声調表
音節頭の子音字が、 声調記号なし 声調記号あり
音節末が
  1. 長母音
  2. 有音末子音
音節末が
  1. 短母音
  2. 無音末子音
マイエーク マイトー マイトリー マイチャッタワー
中子音字 平音 低音 平音 上昇下降音 高音 下降上昇音
高子音字 下降上昇音 低音 低音 上昇下降音 高音 下降上昇音
低子音字 平音 高音 上昇下降音 高音 * *

   →   1   2   3   4 
HOME > タイ語の音声学(1)