結婚式の日
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古式伝統に則り、家の近くのワットから僧を5人呼んでありました。
私たちは昨夜の前夜祭とは違い、これこそ正しくタイの結婚式にふさわしいと思われる衣裳を身にまとって壇上に座っている僧に対座するように
座ります。僧は私が今までに聞いた事もない言葉(サンスクリット語か)で呪文のような詔(みことのり)を唱え、それが終わると私たちの額に
筆で丸印のようなものを描きました。
おそらくこれが夫婦の証を示す印なのでしょう、私にはその由来を理解することはできませんでしたが壇上に座っている私たちの姿を
みんなが見つめています。私は、いつになく真剣な顔で僧にワイをし、神妙な面持ちで僧の顔を見つめます。
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(僧の前で)
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(ほら貝の水かけ)
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そのまま僧の面前に座ったまま結婚式の中で最も重要な儀式、つまり日本の三々九度に相当する儀式が行なわれます。
私たちが再び僧にワイをした後で、私の右手と妻の左手を重ねるようにしてから僧がその上からほら貝に入った水を私たちの手の上に注ぎます。
一筋の水が新郎新婦の二人の手の上を流れ落ち、それがあたかも世の常を表しているのでしょうか、少なくともその時の私にはそう感じました。
それが済むと、僧の前での儀式はすべて終了しました。私は妻の母が用意しておいてくれたご飯を僧に献上してから壇上から降りました。
しかし、結婚式はまだ終わりません。これから昼過ぎまで延々と続くのです。
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次に嫁取りの行列の儀式が行なわれました。
これは新郎である私が一旦家の敷地から外に出て、持参してきた結納金と金(きん)を持って村の人々と一緒に村の中を練り歩くというもの。
つまり、新郎がどれだけの現金と金(きん)を持ってきたかによりその嫁の価値がわかるというものです。
私の周りには村長夫人をはじめとして大人や子供総勢100人の大集団ができ、笛を吹いて太鼓を叩きながらみんなを一緒に村の中を
歩きました。
一回りして妻の家の庭先まで帰ってくると、そこには門番がいて私を家の庭に入れさせまいとします。これもタイの結婚式での儀式のひとつでして
私はそこで門番に対していくらかのお布施をしなければならないのです。誰も彼もが私からお金がもらえるということを知っていますので
にわか門番がそこかしこに全部で10人くらい。
こんなところでケチっていてはケチな新郎になってしまいますので、私は思い切り奮発して1人50B、全部で500Bのお布施をしました。
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(行列が出発するところ)
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再び家の敷地内に戻ると、村の長老により結納金の額と金(きん)の重さがみんなに伝えられます。
仮にお金持ちのご令嬢を嫁にもらいバンコク市内で式を執り行った場合には私では想像もつかないほどに大きなお金になるそうですが
私たちの結婚式の場合は田舎での結婚式でもあることですし、妻もそれほど大金持ちの娘ではありませんのでごくごく平均的な結納金と金だと思っています。
私たちはそれぞれに結納品と金が置かれている小鉢を手にして長老にワイをし、そしてその後で私と妻が向かい合わせに座ります。
妻が私に対して体を平伏した格好の最敬礼のワイをした後で、私は持ってきたいくつかの金の首飾りを妻の首にかけました。
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(持参した結納品と金の前で)
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(米なげ)
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この頃になると式は最高潮に達しており、今度は長老の前に並んで座りずっとワイをしたままで、時にはその場に平伏しながら
結婚の祝辞を申し述べてもらいます。
私たちの頭にはタイ語でスィリモングコンと呼ばれる花輪がつけられており、私の花輪と妻の花輪は一本の糸で繋がっています。
また、周りにいる村人からはお祝いの意味で精米を投げられ、それが顔にあたって痛いほどです。私たちの前にある大きな飾り物は
この日の為に村の人がみんなで作ってくれたものです。
この儀式は時間にして約30分。正座に近い格好で長い間座っているので足の痛さも半端ではありませんが、私にとっては今こうして夫婦になったことを
心身に感じた瞬間でした。
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このような儀式の後で誰もが認める夫婦になると村のみんなが私たちの元に寄ってきて、それぞれに白い糸を私たちの腕に巻いてくれます。
「末永く幸せな夫婦でいられますように。」「子宝に恵まれますように。」そういうことを口々に唱え、まるで自分の息子や娘を諭すかのような
口調で私たちの幸せを願ってくれました。
両親や親戚の人は、ご祝儀とばかりに100Bほどのお金を一緒に巻いてくれたり、妻の妹たちは「私、学生でお金がないから。」と照れくさそうに
言いながら、お金の代わりにバナナの葉っぱを小さく切って巻いてくれました。
私たちの腕に全部で80本ほどの腕輪がかけられた頃に、結婚式はいよいよ終りに近づきました。
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(腕輪)
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(スィリモングコンを頭に)
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結婚式は最後に私たち二人が揃って寝室に入ることによりそのすべてが終わります。
本来のタイの伝統に則れば新郎新婦は明日の朝までこの部屋から一歩も出てはいけないとされているのですが、さすがにこの部屋では
暑すぎます。朝からずっと正装姿でいますので汗と埃で体はべとべとです。
私たちのすぐ目の前に座っている村長夫妻もそのことは百も承知のようで「別に朝までここにずっといなくてもいいですからね。」と
気遣いの言葉をかけてくれます。
私たちが村長夫妻前での一通り御礼の言葉を述べた後で、私は着慣れた普段着に着替えてシャワーを浴びに行き、ようやくこのイーサーン地方での
結婚式が無事に終わったことを知りました。
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